「中古住宅は割安そう」「古い家を買って自分好みにリフォームするのが魅力」――こうした考え方は近年ますます一般的になっています。実際、中古戸建には立地の選択肢が広い実物を見て判断できるリフォームで暮らしを最適化できるなどの良さがあります。

一方で、中古住宅は“良いところだけ”ではありません。購入後に「想定外の修繕費がかかった」「思ったリフォームができなかった」「ローンや税優遇の条件に合わなかった」といったズレが起きやすいのも事実です。中古を選ぶなら、メリットと同じくらい“リスクの潰し方”を先に決めておくのがおすすめです。

中古住宅を選ぶ際の注意点(戸建編)

中古戸建を検討するときは、特に次の4点を押さえておくと失敗が減ります。

1)「10年保証がない」ではなく、「保証の中身が物件ごとに違う」
新築住宅は、法律上「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」について10年間の瑕疵担保責任(資力確保措置:保険または供託)が前提となります。
一方、中古住宅は自動的に10年保証が付くわけではなく、売主が個人か事業者か、契約内容がどうなっているかで、買主が受けられる保証(責任)の範囲・期間が変わります。

ただし「中古=無保証」という意味でもありません。たとえば、既存住宅売買かし保険(いわゆる中古のかし保険)を付けられるケースもあり、保険期間が2年または5年の商品があります。
中古を検討する際は、保証の有無ではなく、①対象部位(構造・雨漏り等)②期間 ③免責や条件(検査の有無)まで確認するのがポイントです。

2)「売りに出た理由」よりも「建物の状態を見える化」する
売却理由は家庭事情など様々で、外から確実に断定できないこともあります。だからこそ重要なのが、感覚ではなく書類と検査で状態を把握することです。
具体的には、建物状況調査(インスペクション)の活用や、雨漏り跡・床の傾き・シロアリ・給排水の劣化など「後から効く項目」を優先してチェックすることをおすすめします。

3)リフォームは“何でもできる”わけではない(2025年4月以降は特に注意)
SNS等で見かける「劇的リノベ」は魅力的ですが、工事内容によっては建築基準法上の手続き(建築確認等)が必要になる場合があります。
とくに2025年4月1日以降、木造戸建(区分上「新2号建築物」等に該当するもの)の大規模なリフォーム(大規模の修繕・模様替え)は、内容次第で建築確認手続きの対象になることが整理されています。
「リフォームするから古くても大丈夫」と決める前に、この家で・どこまで・いくらで・手続き込みで可能かを、購入前に見立てておくのが安全です。

4)ローンと税優遇は“中古だから不利”ではなく、“要件に合うか”が分かれ目
中古戸建は、築年数・耐震性・検査や証明書の有無によって、金融機関の評価や借入条件が変わることがあります。
また、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)も、適用期間や要件が定められているため、購入前に「この物件は対象になり得るか」を確認することが大切です(制度は入居年・物件区分で要件が変わります)。

内覧でそのまま使える「聞く質問10個」(中古戸建)

  • 売主は「個人」か「事業者」か?(契約不適合責任の条件・期間が変わりやすい)
  • 契約不適合責任は「免責」か、期間は何年か?(書面で確認)
  • 雨漏り歴はあるか? いつ・どこで・補修方法は?(写真や修理記録の有無)
  • シロアリ点検・防蟻処理の履歴は? 最終施工時期、保証書の有無
  • 給排水管・給湯器の交換履歴は?(年式と交換目安を把握)
  • 外壁・屋根のメンテ履歴は?(塗装や葺き替えの時期/施工会社)
  • 耐震性の裏付けはあるか?(新耐震の築年・耐震診断・補強工事の有無/資料)
  • インスペクション(建物状況調査)は実施済みか? 未実施なら「実施してから判断」できるか?
  • 希望するリフォームは可能か?(柱・耐力壁の位置、増改築歴、確認申請が必要になり得る工事か)
  • 既存住宅売買かし保険は付保できるか?(付ける場合、対象範囲・期間・免責、検査のタイミング)

※「口頭回答」ではなく、可能な範囲で根拠書類(保証書、修理記録、検査報告書等)までセットで確認できると安心です。

住宅の性能(断熱・省エネ・耐震・設備)は年々アップデートされています。中古住宅が向いている方も多い一方で、“想定外を減らす段取り”がないまま買うと後悔になりやすいのも中古の特徴です。
中古を選ぶ場合は、①インスペクション等で状態把握 → ②リフォーム可否と概算 → ③資金計画(ローン・税)の順で、購入前に一度「見える化」してから判断するのがおすすめです。

※本記事は一般的な注意点の整理です。個別物件の適法性・保証範囲・ローン可否・税務判断は、契約書面・行政窓口・金融機関・建築士等の確認を前提にご検討ください。

角地って資産価値が大きい?「土地」から買うことはなぜ難しいの?
南道路=日当り良好ってホント?「完成品は売れ残り」の誤解!
多棟現場のメリット・デメリット中古住宅を選ぶ際の「隠れた本音」(戸建編)
中古住宅を選ぶ際の「隠れた本音」(マンション編)北道路・敷地延長・傾斜地 物件の有効な活用方法は?
売るのが先? 買うのが先?
(住替えのチェックポイント)